年間15万件以上手術が行われている「脱腸」は入院せずに治せる病気

鼠径(そけい)ヘルニア、いわゆる「脱腸(だっちょう)」は、40歳以上の中年男性の発症率が最も高い傾向にありますが、先天的な理由から脱腸になる子どもや、出産を機に脱腸を発症する女性もいるので、性別や年齢に関係なく発症する可能性のある病気と言えます。
そして、意外と知られていないのですが、実は盲腸よりも脱腸のほうが患者数は多く、手術もより多く行われています。

年齢や性別に関係なく、誰にでも起こりうる脱腸は、症状に気づいた時点で早めに医師による診察を受けて、できるだけ早く治療を受けることで症状の悪化を防ぎ、早期の社会復帰を実現できる病気です。

一般的な病院で治療を受けた場合は最低でも1週間ほど入院する必要がありますが、腹腔鏡(内視鏡)による「脱腸(鼠径ヘルニア)日帰り手術」の場合、初診時と手術当日をあわせても来院日数は2~3日間で済みます。

手術と聞けば、「仕事を長く休めない」「長期で家を空けられない」と躊躇されている方も多いようですが、脱腸(鼠径ヘルニア)日帰り手術のような「入院をせずに手術を受けられる」ケースもあるので、症状を長く放置することなく、早めに脱腸(鼠径ヘルニア)の診察や治療を行っている専門の医療機関に相談しましょう。

入院の必要がない脱腸の日帰り手術ついて

鼠径(そけい)ヘルニア

「まだ痛みがないから大丈夫だろう」と思っていたのに、突然患部に激痛が走って嵌頓(かんとん)という重篤な症状を起こしてしまう患者さんが少なくありません。
脱腸の患者さんのうち、全体の約10%が嵌頓(かんとん)になると言われており、嵌頓(かんとん)の状態になった場合に緊急手術が必要になる確率は35%程度と言われています。 特に、女性の患者さんに多い「大腿ヘルニア」という種類の脱腸(鼠径ヘルニア)は、嵌頓(かんとん)に最もなりやすいと言われているので注意が必要です。

盲腸よりも患者数や手術件数の多い脱腸は、手術以外の治療法はありません。放置したことが原因で緊急手術が必要となれば、入院を余儀なくされるので、そのような状態になる前に「脱腸の日帰り手術」を受けて計画的に治療を受けることが大切です。

・脱腸の日帰り手術は傷が小さく痛みの少ない腹腔鏡手術
「入院せずに治療を受けたい」という方に選ばれている治療法、それが「脱腸(鼠径ヘルニア)の日帰り手術」です。 脱腸の日帰り手術は、腹腔鏡(内視鏡)による手術を行います。従来の手術法とは違い、細い手術器具を採用することで「切開による傷が小さく(3mm~5mm)」、「手術による痛みが少ない」ということが魅力です。
このような日帰り手術を実現させられる理由は、「専門の麻酔医と連携していること」が大きく関係しています。脱腸の日帰り手術は、腹腔鏡による手術を執刀する外科医と、麻酔の調整を行う専門の麻酔科の医師が、連携を取りながら手術が進められます。
その結果、外科医は執刀に集中し、麻酔科医は麻酔の調整に集中して、患者さんが快適に手術を受けられるように最大限の配慮がされていることが大きな強みです。
・腹腔鏡手術と開腹術の違い
脱腸(鼠径ヘルニア)の手術は、従来法と呼ばれる「開腹術」と、TAPPと呼ばれる「腹腔鏡(内視鏡)手術」という2つの種類があります。
開腹術の場合、腸などの組織がはみ出しているすき間にメッシュを固定して補強するために、太ももの付け根を最低でも3cmほど切開します。キズが腹腔鏡手術に比べて大きいことから、痛みが強く、社会復帰まで時間がかかるといった特徴があります。
脱腸の日帰り手術は、後者の「腹腔鏡(内視鏡)手術」により治療を行います。腹腔鏡手術は、下腹部に3mm~5mmの器具を挿入して行う手術です。器具の一つに細いカメラを入れて、モニターに映し出された映像を見ながら施術をします。腸などの組織がはみ出しているすき間にメッシュを固定して補強し、最後は切開した部分を縫い合わせて手術が完了します。 1cmにも満たない小さな切開のみで施術できることから、痛みも少なく、日帰り手術に向いている麻酔薬や痛み止めにより、手術後1時間ほどで帰宅できるまで回復することが大きな特徴です。
腹腔鏡(内視鏡)による日帰り手術が可能かどうかは、専門の医師が手術前の診察や検査を行った上で判断します。持病がある場合は持病の治療を先行して、症状が改善した上で日帰り手術が提案されることがあります。日帰り手術が受けられない場合は他の術式を提案してもらえるので、症状を放置することなく早い段階から専門の医療機関に相談されることをおすすめします。

保険は使える?気になる脱腸の治療費について

鼠径(そけい)ヘルニア

脱腸の症状を抱えている患者さんの中には、「手術は受けたほうが良いのは分かったけど、治療費がどのくらいかかるの?」と経済的な面で不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。そこで続いては、気になる脱腸の「治療費」について紹介します。

・脱腸の治療(手術)は健康保険が使える?
脱腸(だっちょう)の手術は「保険診療」です。健康保険の種類や年齢などにより自己負担額は異なりますが、日帰り脱腸手術に健康保険を使うことができます。 健康保険の3割負担で高度療養費制度を利用できる場合、脱腸の日帰り手術(腹腔鏡)費用の自己負担額は8万1千円ほどです。従来の開腹法の場合、自己負担額は6万円ほどです。医療機関による費用の格差は日本国内においてはそれほどありません。
また、手術前に受ける術前検査も保険診療となり5千円前後かかり、医療機関によっては肺血栓塞栓症の予防用ストッキングや創保護材料、術後の軽食など、周術期用品が保険診療の扱いとは別に実費がかかることがあります。
・脱腸手術費用の支払い方法
健康保険が適用される脱腸(鼠径ヘルニア)手術費用の支払い方法は、「一旦自己負担満額を支払う方法」と「最終的な自己負担分のみを支払う方法」の二通りです。
前者は、一旦、健康保険の3割負担分(満額)を支払い、後ほど高額療養費の申請書を公的医療保険に提出し、限度額との差額分の払い戻しを受ける方法です。申請書の提出に加えて、領収書が必要になることもあるので大切に保管しておきましょう。
後者は、あらかじめ公的医療保険に限度額適用認定書を発行してもらい、最終的な自己負担分の費用のみ支払うという方法です。前車の場合、あとから払い戻しされますが、一時的な支払いによる経済的な負担を軽減するには後者の方法がおすすめです。
・日帰り手術なら入院費用がかからない
腹腔鏡(内視鏡)による日帰り手術はキズが小さく、痛みの少ない手術法です。2~3日間という非常に短い期間で治療を終えられるので、休みが取りづらい会社員の方や個人経営者、自宅を長く留守にできない主婦の方などに大変喜ばれている治療法です。
脱腸の日帰り手術の魅力は、治療が短期間で完了するというだけではありません。例えば、従来の開腹手術に比べ、治療にかかる費用を安く抑えることができるのが日帰り手術の魅力です。
入院が必要となる手術の場合、手術費用に入院費用が加算されるので経済的な負担が増えます。一方、日帰り手術の場合は、日帰り=入院しない、ということなので「入院費用」がかからず、経済的な負担を軽減することができます。

初期段階の脱腸(鼠径ヘルニア)であれば、腹腔鏡(内視鏡)による日帰り手術を受けられる可能性が高いですし、入院の必要がなければ経済的な負担を最小限に抑えることができます。はじめて手術を受けられる方は様々な不安を抱えているかと思いますが、このような不安を一つずつ解消し、前向きに治療に臨めるようにするためにも早めに専門の医療機関に相談されることをおすすめします。